レポート

人と人との繋がりが根幹にあるムロフェスだからこそ生まれたに違いない
音と想いと縁で紡がれた素晴らしき音世界

 
ラウンジステージへ足を運ぶと、スタート前からフロアは身動きが取れないほどの状況の中、オープニングを飾ったのは、変幻自在のアプローチで独特のポップソングを奏でる[ミソッカス]。「(センターステージの)a flood of circleと間違えてないよね? 大丈夫?」とデトロイトはるきち(Vo./G.)がおどける場面もあったが、冒頭の『パパパ』から怒涛の盛り上がり。オーディエンスを自分たちの世界観へと誘い、パッと聴いただけでも耳に残るダンスナンバーから新曲まで、見事なパフォーマンスで駆け抜けていく。来月には新作[深き森の迷路]のリリースが予定されており、さらなる話題をさらっていくであろう。
 

 
そして、新世代のガールズロックバンドとして注目を集めまくっている[yonige]。胸を打つ強いリズムと浮遊感を漂わすヴォーカルが融合し、一気にフロアを包み込む。余計な装飾はなく、必要なモノだけでシンプルにロックを放っているのだが、それが何とも言えないほど後を引くのだ。「最高なフェスに捧げます」と牛丸ありさ(Vo./G.)が語ってから、エッジの効いたイントロから巧みな歌への流れが素晴らしい『バッドエンド週末』、ひとクセもふたクセもあるポップナンバー『あのこのゆくえ』等、そのポテンシャルを存分に発揮し、ラストは攻めに攻めまくった『さよならアイデンティティー』。確固たる存在感を見せつけてくれた。
 

 
ド迫力の歌力と落ち着いたライヴ運びで強烈なアピールをしてくれたのが[Age Factory]だ。何と言っても印象的だったのが、1曲目に放ったバンドの代名詞とも呼べる『ロードショー』。一挙一動のすべてに力をこめ、魂を震わせるように歌い上げ、音を叩きつける。瞬く間にラウンジステージを制圧していったのだ。その後も決してテンションが落ちることなく、温かさが滲み出る『Seventeen』、タイトル通り、息をつく暇もないほどのフルスロットルで突き抜ける『疾走』でエネルギッシュなライヴを展開。清水エイスケ(Vo./G.)が「オレは今を生きたい」と宣言してからの『プールサイドガール』もとてつもなく純度が高かった。
 

 
現在、"出会ってくれた人に会いに行く"というコンセプトのもと、ツアーを敢行中の[QWAI]。意外にも今回が初出演だという彼らだが、1曲目の『サクラ』で大久保良一(Vo./G.)が歌い出した瞬間からフロアは大歓声。メロディーと演奏の重なり方も素晴らしく、ドラマティックに彩っていく。彼らの持ち味であろう、しっかりとコクがあり、懐かしさや親しみやすさはあれど、そこに古さを感じさせないメロディーはやはり麗しく、多くのオーディエンスが酔いしれる姿が見受けられた。
 

 
メンバー全員が一丸となってフロアの熱気を高め続けたのが[NECOKICKS]。ゴキゲンに楽しく、フェスらしい賑やかさもあり、そこら中から歓喜の声が湧きっぱなし。まさにライヴハウスの空気となり、矢継ぎ早に繰り出す曲に対して大合唱も巻き起こる。ハイライトは、これまでムロフェスに出れず、悔しい想いをしながらフライヤーを配り続けてきたことを振り返りながら「過去を変えることはできないけれど、過去を肯定することはできると思ってる」とTAKUMI(G./Vo.)が叫び、高らかに放った『1秒先の未来』。最大級に音で遊び、感情をぶつけた姿は多くのオーディエンスの心に響いたに違いない。
 

 
適切なビート感でしっかりといい歌を紡ぐ姿を見せつけてくれた[Synchronized door]。昨年、初期メンバーであった木村恵太(Dr.)が加入して現体制となったわけだが、当然のように馴染みもよく、ひとつひとつの音に熱がほとばしる。『彗星』では細やかなアレンジと伸びやかな歌で奥の奥まで音を飛ばし、湧き上がる感情を映しだした『イミテーションブルー』も存分に響き渡せる。まっすぐだからこそ、言葉とメロディーが光るのだ。9月には約2年ぶりとなる新作[NAKED]のリリースし、新体制後として初となるワンマンも控えている彼ら。より一層の活躍が期待できるステージだった。
 

 
今年6月にメジャーデビューも果たし、快進撃を続けるピアノロックバンド[SHE'S]。普段とは勝手が違うステージで序盤は探るような仕草も見受けられたが、オーディエンスのエネルギーにも後押しされたのであろう。徐々に気持ちも身体もほぐれ、包み込むような多幸感で持ち味を発揮していく。絶妙なテンポ感でステージへオーディエンスが惹きつけられた『遠くまで』では、井上竜馬(Vo.)が思わず「ありがとう!」とこぼしてしまうほどの盛り上がりを見せ、すぐ側に寄り添ってくれるような優しさを持つ「Voice」では驚くような大合唱。まさに今、響かせているバンドならではの鮮やかな光景が広がっていた。
 

 
しゃがれた本能的な声が空間を切り裂いていく。純度の高いロックンロールでフロアを揺らしたのが[Large House Satisfaction]だ。強靭なビートを叩き出し、すべてをかっさらう勢いで襲いかかり、小林要司(Vo./G.)の無骨なメッセージもムードを加速させ、高みへと上り詰めていく。ラウンジステージを瞬時に狂乱のダンスフロアへ変貌させた『Traffic』も凄まじかったが、クライマックスと呼びたいのは小林賢司(Ba.)が「不可抗力で観たヤツもいるかもしれないけど、一緒にいけるかー?」と煽った『先端』のラスト。半端じゃない人口密度のフロアが揺れに揺れ、猛烈なインパクトを残していったのだ。
 

 
「ムロフェス、遊べるかい?」と中野大輔(G./Vo.)が軽やかに語りかけた瞬間からアクセルを思い切りよく踏み込み、会場の空気を自在に操ったのが[ジラフポット]。ロックのダイナミズムはそのままに秀逸なアレンジを施し、フックに満ちたフレーズが所々に散りばめられた曲を披露していったのだが、特に驚いたのは『HECTOR-G』で見せつけられた躍動っぷり。加えて、照明の逆光感も相まって、鮮烈でスタイリッシュ世界観が展開されていく。その後も、フロアと盛大なコール&レスポンスを巻き起こし、信じがたいほどの盛り上がり。その場にいたすべてのオーディエンスの心を鷲掴みにしていったに違いない。
 
 

 
 いよいよ、ラウンジステージも終演を迎える。トリを飾るのは[AJISAI]だ。惜しまれつつ、2014年6月に活動休止を発表した彼ら。しかし、熱烈なオファーを受け、昨年のムロフェスにて約1年ぶりにライヴを披露。RAINBOW STAGEでの勇姿が忘れられない人も多いはず。その流れを受け、今回も出演を果たしているのだが、貴重な機会ということもあり、1曲目の『虹』が始まるやいなや、悲鳴にも似た歓声が湧き上がる。落ち着いて感触を確かめるように、しっかりと音を奏でる。そこに酔いしれるオーディエンス。何ともハートフルで心地よい空間だ。松本俊(Vo./G.)の少年のような無垢さがある声も非常にいい。「自分が頑張っていれば、誰かの生きる力になっている。少なくとも、(集まってくれたお客さんは)僕の生きる力になってます。ありがとう」と松本が語ってからの「レイク」で本編が終了したのだが、それで収まるわけもなく、とてつもなく大きなコールでステージへと舞い戻り、ラウンジステージに集まったすべての人を笑顔にする「未来」を披露。クライマックスで起こった大合唱も素晴らしく、音と想いで紡がれた空間にすっかり心を奪われてしまった。美しき感動のフィナーレかと思いきや、熱が高まったオーディエンスに再び呼び出され、切なる願いを歌い上げた「桜並木」で締め括り。万雷の拍手でラウンジステージの幕は閉じた。
 

 
 総勢10バンド。普段は物販スペースやDJフロアとして使用される場所ということもあり、根城であるライヴハウスとは少し勝手の違った環境ではあったが、そこは現場で戦ってきたバンドばかり。それぞれに持ち味をしっかりと発揮し、色鮮やかパフォーマンスが体感できたラウンジステージ。たくさんの出会いと発見が生まれたことだろう。ムロフェス並びにそれぞれのバンドの活動に対して、より期待感が高まったに違いない。
 
 
Report by :  ヤコウリュウジ

【センターステージ】
1. a flood of circle
2. LACCO TOWER
3. Halo at 四畳半
4. シナリオアート
5. cinema staff
6. GOOD ON THE REEL
7. SUPER BEAVER
8. グッドモーニングアメリカ
9. アルカラ
 
【レフトステージ】
1. MAGIC OF LiFE
2. バックドロップシンデレラ
3. Rhythmic Toy World
4. tricot
5. THE MUSMUS
6. バズマザーズ
7. ラックライフ
8. My Hair is Bad
9. ircle
 
【ラウンジステージ】
1. ミソッカス
2. yonige
3. Age Factory
4. QWAI
5. NECOKICKS
6. Synchronized door
7. SHE'S
8. Large House Satisfaction
9. ジラフポット
10. AJISAI