DAY2:MU-RIGHT STAGE

DAY2:MU-RIGHT STAGE

DAY2:MU-RIGHT STAGE

02_ABSTRACT MASH

[Nothing's Carved In Stone]としても精力的に活動している村松拓(Vo&Gt)を擁するバンド[ABSTRACT MASH]。2011年の活動休止以来、昨年、7年ぶりに活動を再開し、初のフェス参戦を果たした。「トップバッターでめっちゃ緊張している」とMCで明かしていたが、そんなそぶりをまったく見せない圧巻のパフォーマンスを展開する。出演者の中でも異彩を放つ英語詞の楽曲が妙に心地好く、村松の伸びのある歌声と美しいギターの音色が重なり合い、サウンドの壮大な世界観が無限に広がっていく。祝福の歌『Aspilli』は日本語詞の楽曲で、英詞曲とのコントラストを生み出していた。わずかな時間の中でも濃厚なストーリーを作り出せる、もっとじっくり見たいバンドだ。(TEXT:中沢 純)



 

04_忘れらんねえよ

ステージに現れるやいなや、あっという間に多くの観客で埋め尽くされ、その人気ぶりを示した[忘れらんねえよ]。いつまでも青い純粋性を宿したロックナンバーを連発する。『ばかばっか』では柴田隆浩(Vo)が観客のところへ飛び込み、その上を流れて大盛り上がり。観客の上で立ち上がり、ビールをひと息で飲み干すなど、サービス精神豊富&やりたい放題だ。『踊れ引きこもり』では[LEGO BIG MORL]のタナカヒロキを呼び込み、J-POPのフィーチャリング曲風の即興を披露して楽しませてくれた。彼の歌は人間の持つ繊細な感情や想いを見事にすくい上げているからこそ、メッセージが心のずっと奥のほうへ響くのだ。観客みんなが笑顔になる稀有な存在。ライブを見ていたら、そんなことを強く思った。(TEXT:中沢 純)



 

06_BRADIO

ダンサブルなサウンドを武器に、「ファンキーでハッピー、略してファンピー」を届けてくれるパーティーバンドは、初っ端からハイボルテージなステージング。カッティングギターや多彩なリズムセクションで、自然と体が動く楽曲を展開。その中でも真行寺貴秋(Vo)の存在感が強烈。体全体を使ったアクションと黒光りする声量でステージを支配する。ダンスレクチャーのコーナーもあり、どのように踊ればいいかを観客に指導。その後に演奏された『スパイシーマドンナ』などでは、より一体感が生まれ、キラキラとしたディスコみたいな空間へと変化させる。「パーティーの向こう側に連れていく」という宣言通り、夏の暑い日差しの中、空中にミラーボールが見えるような楽しいひとときだった。(TEXT:中沢 純)



 

08_四星球

「やってもうた〜! 風呂フェスかと思った〜!」と、全員ブリーフに手ぬぐいで登場のボケにはPANのゴッチ(Gt)も参加。『クラーク博士と僕』では北島康雄(Vo)がフラフープを客席に投入、ステージ脇セットの上によじ登っていたまさやん(Gt)が『鋼鉄の段ボーラーまさゆき』で、ダンボール創作物を次々と放出。疾走しまくるロックンロールを叩きつけながら、とにかく冒頭からやりたい放題の大暴れで爆笑をさらった[四星球]。新曲『Mike is my friend』、『妖怪泣き笑い』と、聴けば味わい深い歌詞とブルースを漂わせるサウンドを響かせつつ、大行列の観客を引き連れ、会場を全力で一周する北島の姿に“日本一泣けるコミックバンド”の異名は伊達じゃないと実感。唯一、[ムロフェス]を皇室婚約者に引っ掛けたギャグはやりすぎだったと思います(笑)。(TEXT:伏見 聡)



 

10_打首獄門同好会

リハ中に会場でスタッフが“うまい棒”を配り、『デリシャスティック』の轟音から唸りを上げた[打首獄門同好会]。『こどものねごと』では「オッケー ムロフェス遊ぼうぜ!」の大合唱を巻き起こし、『きのこたけのこ戦争』では、観客全員が一斉に両腕を掲げる。初見のオーディエンスも多いはずのフェスだからこそ、歌詞が目からも入る “パワポVJ”の効果は絶大だ。「明日の朝に向けてこの曲を…」と贈られた『はたらきたくない』から、オーディエンスの頭上をマグロが飛び交った『島国DNA』。畳み掛けるように展開される様々なメタルグルーヴに笑顔で暴れるファン。とどめに幕張の地盤が心配になるほどの縦揺れを巻き起こした『日本の米は世界一』。いつしか切り裂かれたような雲の隙間から真夏の日差しが照りつけていた。(TEXT:伏見 聡)



 

12_LONGMAN

お馴染みのオープニングナンバー『OPENING』から怒涛の勢いで突き進んだのが、男女ツインボーカルのメロディックパンクバンド[LONGMAN]。初出場となった昨年は活動再開してから間もないこともあり、もどかしさもあったはず。そこからリリースとツアーを重ね、太くなったバンドを見せつけるべく、『So many men,So many minds』や『IN THIS WAY』等々、とにかく曲を投下。会場入りの際、対応してくれたスタッフの女性がHIROYA HIRAI (Gt&Vo)のタイプだったという小ネタも挟みつつも、1分1秒を惜しむように駆け抜けていく。バンドのアイコンとも言えるSAWA YORIKI(Vo&Ba)も髪を振り乱しながらライヴへのめり込んでいくが、鬼気迫るというより、楽しむことに全力で向かっている彼ららしく、漂うのはどこまでもポジティブなバイブス。曲を追う毎に惹きつけられていく人が増えていったのも当然の結果だろう。(TEXT:ヤコウリュウジ)



 

14_Saucy Dog

MCで「僕らはここ(ムロフェス)から始まったと言っても過言ではない…」と語った通り、一昨年はオープニングアクト、昨年は初日のトップバッターを務め、3年連続の参加となった[Saucy Dog]。SEで登場し、会場に一礼。ドラムセット前で円陣を組む生真面目な様子が、他のバンドとの気質の違いを伺わせる。独特の緊迫感と熱を漂わす『メトロノウム』のサウンド、夏の生暖い風に乗って響くコーラス、ハーモニーの美しさが絶品だ。大きな手拍子を巻き起こした『バンドワゴンに乗って』に続き披露した『雀ノ欠伸』は、自然と体が揺れるリズムと繊細かつ温かい歌が印象的。『コンタクトケース』そして『グッバイ』の切ない歌声と叫び。熱気が先行しがちなフェスにも、独自のスタンスで叙情的なワンシーンを刻んだ彼らの残したインパクトは大きかった。(TEXT:伏見 聡)



 

16_ircle

スタート前から高ぶりに高ぶっていた[ircle]は、当然のように振り切った状態で『あふれだす』で戦闘開始。その瞬間の感情が反映される河内健悟(Vo&Gt)の歌声に圧倒されていると、『バタフライ』はさらにその先へと突き進み、一心不乱を体現するようなパフォーマンスを見せつける。ヘヴィに響かせながらも、軽快なノリとドライブ感。絶妙なバランス感が鮮やかだ。速いビートに乗せ、会場の隅々まで沁み渡らせた『瞬』に続き、河内の「くさってたまるか!」という絶叫からドロップされた『セブンティーン』は最高の盛り上がりを見せる。待ちかねたオーディエンスも多かったのだろう。歓声の湧き方、拳の突き上げられる数が尋常ではなかった。ラストには、すべての人の幸せと再開を願いながら放った『ばいばい』。何度も"今はね"というフレーズを強く響かせる河内。彼らが強烈な支持を集める理由がそこにある気がした。(TEXT:ヤコウリュウジ)



 

18_アルカラ

[ムロフェス]2日目。大トリは、欠かせない存在でもある[アルカラ]だ。開催中、どのライブでも稲村太佑(Vo&Gt)の姿が見受けられたが、出演するフェスということではなく、自分たちの大切な場所だと受け止めているのだろう。その気持ちが溢れ出すわけだから、どうしようもなく胸を熱くさせるに決まっているのだ。
夜空へ響き、まるで壁のないライブハウスのような空間を描いた『アブノーマルが足りない』から、彼らだからこその世界観が素晴らしい。キレと浮遊感が同居した『チクショー』では下上貴弘(Ba)も全身をしならせ弾き倒す。フェスの大トリ、定番曲だけでも十分はなずだが、妖艶に新曲『誘惑メヌエット』をプレイ。現在進行系で駆け抜けているバンドの今を届けてくれる。中盤、バイオリンを奏でる稲村の姿も美しかった。巧みなアンサンブル、バラード調ではあるが、ひと筋縄ではいかない『いざよい』を披露し、主宰である室氏をステージへと呼び込み、フィナーレが近いことを改めて実感。
「手探りでやってるので、なんとか9年目もどこかでできるように頑張っていきたいと思います。そして、バンドのみんなも続いてくと思いますので、どうぞ応援よろしくお願いします!」とオーディエンスへ室氏が謝辞を述べ、締めくくるべく奏でられた『交差点』ではステージに出演者がなだれ込み、稲村がステージ横の矢倉へ登れば、室氏も反対側の矢倉へと登るという、まさにお祭り騒ぎ。ここで大団円かと思ったが、少しばかり余った時間を最後の最後まで音で埋め尽くそうと考えたのだろう。『TRAIN-TRAIN』を稲村が歌い出すという、予定調和じゃ終わらない[ムロフェス]らしい締めくくりとなった。
他にはない色彩と熱がある[ムロフェス]。また来年、この格別な空間がまた味わえることを今から願っている。(TEXT:ヤコウリュウジ)