MURO FESTIVAL 2017 MURO FESTIVAL 2017
MENU

report

DAY2:LEFT STAGE

DAY2:LEFT STAGE

前日の遠慮のない「夏」を体感した者にとっては安心感を覚えるぶ厚い雲。あとは雨が降ってくれないことを祈るばかり、そんな曇天で迎えた[MURO FESTIVAL 2017]二日目。

荒削りながらも呼吸を一つに、バンド1丸となった全力のグルーヴで、この日のオープニングアクトを務めた[KAKASHI]。ストレートながら実は巧みなリズムアレンジ、そして一聴で歌えるような伸びやかでキャッチーなサビは、入場直後の臨戦態勢もままならぬ観客をグイグイ引き込んでいく。[MURO FESTIVAL 2017]二日目はこうして最高のスタートを切る。



若干、雨足が強くなってきたあいにくの空模様。だが[Brian the Sun]は観客の意識をステージへと釘付けにする。そのアンサンブルは気分を晴れやかにするスケール感を持ち、練られたリズムワークやフックは躍動感をもって楽曲を展開させる。そしてスッと入り込む森良太(Vo&Gt)の言葉と歌声。淡々としたステージ運びながらも確かなパフォーマンス、その心地よさに委ねていれば早くもステージはラストだ。骨っぽいエモーショナルも感じさせる『ロックンロールポップギャング』では、雨粒で霞むフロアに拳の数々が突きあがる。野外ならではのグッと来るひと時、その瞬間を見事に形造ってみせた。



RIGHT STAGEが終わり、ステージ転換のインターバル、既にフロアから巻き起こる笑いと歓声。遂に[四星球]がムロフェスLEFT STAGEに遂に降臨する。
「初出場です! この瞬間から新しいムロフェスが始まるっていうことで宜しくお願いします。このビッグマウス、皆さんの憂鬱を全部食べ尽くすためにあるんです。嫌なこと全部、この25分で忘れてください!!」
言葉もネタも巧みなら、躍らせるバンドサウンドも巧みな百戦錬磨の笑劇場。彼らのステージは会場の全敷地だ。場外乱闘は当たり前、全てのオーディエンスを盛り上げ演出に加担させる最強のフェスキラーは、笑いと楽しさという“陽”のエネルギーの爆発力を痛感させる。



黒いタイトなスーツに身を包み、登場の瞬間でキリッとした緊張感で空気を変えてみせた[バズマザーズ]。冒頭『ハゼイロノマチ』『サンダーボルト』は野性剥き出しのライブ仕様。ヒステリックに掻き鳴らされるテレキャスと、原始的本能が暴発するリズム隊。衝動を吐き散らしたかと思えば、緻密に構築された『麻婆豆腐殺人事件』ではスタイリッシュなダンスチューンも涼しい顔をして叩きつける。野性も洗練もエロも兼ね備え、ロックンロールエチケットに彩られたそのステージは、確固たるポップセンスと垣間見える虚無感が混在するその世界観でオーディエンスを魅了する。



「ムロフェス行くぞ! 自由に楽しめ!!」
雨上がりのひと時に、瑞々しく鮮烈なバンドグルーヴで躍動したのは[MAGIC OF LiFE]。絶大なるキャッチーなサウンド、そしてフロアを突き進みオーディエンスの胸を撃ち抜くようなピュアなメッセージ。勢いは一瞬のスキも見せぬまま加速を続ける。切なくも前向きな強さを持った『夜空のBGM』が心の琴線を揺らし、さらなる感動へと誘うように最新シングル曲『線香花火』をラストに。高津戸信幸の歌の無垢さ、美しさ、強さが、バンドのアイデンティを浮き彫りするように響き渡る。



その圧倒的なエンターテイメント性は、ドでかいアフロを揺らしながらカテゴリーの壁を一瞬で飛び越えてみせた。パーティモンスター[BRADIO]が出現させた“ムロフェスダンスホール”は、バンドの存在感とともに、フェスの醍醐味を痛感させたひと時でもある。楽しすぎる。そして誰よりも演者が楽しみすぎる。日本人離れしたソウルをたぎらせる真行寺貴秋(Vo)は、開始2曲で靴底を剥がすほどのハジケぶり(笑)。そして本格的なファンクミュージックが生み出す絶品グルーヴは、4000人で揃いのソウルステップを踏むという圧巻の光景も繰り広げる。この会場において踊っていないことがむしろ不自然、そんな空気すら漂わすひと時は、全てのオーディエンスの脳裏に忘れられない「最高の夏」を刻み込んだに違いない。



「もっと来いよ!」と、転換のインターバルには有り得ない煽り。焦ってステージに急行すると、サウンドチェックと同時進行で『いろはにほへと』を本域プレイする[Rhythmic Toy World]……フロアは爆ノリ。自由な幕開けだ(笑)。
歌とメロディとダンサブルなグルーヴが自然な形で三位一体となったサウンドは、巧みに配合された起爆剤を背負って会場を駆け巡り、オーディエンスの心と体に着火して回る。爆ぜるようなフロアの景色に笑顔を浮かべながらも、さらに上を求めるような内田直孝(Vo&Gt)のアジテーション。まるでワンマンのように高め合う演者と観客の姿が印象的だ。



雨もすっかりやみ、情緒豊かな夕暮れ時のお台場。そんな心地よい空間に、響き渡る凶暴なメタリックサウンドと飛び交う駄菓子“うまい棒”。『デリシャススティッック』で幕を開けた[打首獄門同好会]は、終始フロアを爆発させ、爆笑させる。まぐろの浮き輪が人海をクラウドサーフする『島国DNA』、ゲストラッパー登場でド派手に盛り上げる『歯痛くて feat. Dr.COYASS』、スクリーンの必殺VJもガイドに新曲とは思えぬ一体感を遂げた『糖質制限ダイエットやってみた』、とはいえトドメは代表曲『日本の米は世界一』で食への欲望を剥き出しに。猛烈にバカバカしい。だがそれもまた時間と空間を楽しませる武器だ。そこに踊れるフックを大量投下し、笑顔が連なるサークルモッシュ、笑顔が激突するウォール・オブ・デスという、唯一無二の現象を作り上げる。



2日間に渡る[MURO FESTIVAL 2017]。研ぎ澄ましたオリジナリティとライブハウスで培った百戦錬磨のステージングでしのぎを削り合ったLEFT STAGEもいよいよトリ[LACCO T0WER]を迎える。
TVアニメ[ドラゴンボール超]のエンディングにも起用され、幅広く浸透した『薄紅』、続く『藍染』と、ピアノとビートが快走するアッパーな幕開けが華々しい。ストロボが明滅する中でのハードなセッションでギアを入れたかと思えば、『林檎』で一気に噴き出るエモーション。ラストは『一夜』、松川はフロア最前のバリケードの上で、ステージ上のメンバーも沸き立つように煽る。お台場に満場のハンドクラップをこだまさせ、見事な大団円を迎えた。繊細ながら強靭に並走するバンドアンサンブル、音の壁を突き破って言葉を届ける松川ケイスケの歌。全18バンド、そのトリに相応しい貫禄のステージだった。



Text : 根本豪