MURO FESTIVAL 2017 MURO FESTIVAL 2017
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DAY1:LEFT STAGE

DAY1:LEFT STAGE

会場規模の拡大、さらには2DAYSという大幅なスケールアップにて迎えた[MURO FESTIVAL 2017]。
澄んだ青が無限に広がるような開放感、快晴に恵まれたお台場に硬質なテレキャスの倍音が響き渡る。今年のムロフェス開幕を飾ったのは、オープニング・アクト起用された3ピース[Saucy Dog]。甘酸っぱくほろ苦い歌と心地良く疾走するビートが幕開けに相応しい清々しさを感じさせる。ムロフェスに抱き続けた憧れ、若手に先を越された悔しさ、そして遂にステージに立った喜びを鮮烈に音に載せる。全3曲の短いステージだったが、バンドはその持ち味をキッチリ見せつけてくれた。



太陽が本領を発揮しはじめた正午過ぎ、身体だけでなく心も焦がすようなドラマティックな歌を聴かせた[cinema staff]。バンドの軸を成すメロディと歌声に対し、決して引き立て役だけに徹することのない絶妙なバランス感のバンド陣。歌の繊細さと迫力を自在に押し引きする、その緻密なバンドアンサンブルはステージの熱量を加速させていく。音が風で流されるのは野外フェスならではの環境だが、堅固に絡み合ったバンドのグルーヴは解けない。ラスト『僕たち』では、心の機微がキッチリ焼き付けられたパフォーマンスとそれを受け止めるオーディエンス、互いが真摯に向き合い、気持ちを高め合う光景が印象的だった。



アコギの倍音がカラフルに楽曲を彩る『Over You』から始まり、一気に極上POPな世界に染め上げた[SHE’S]。井上竜馬(Vo)は2曲目以降をアコギからピアノへ、リズムワークや音の広がりにバンドの個性がキッチリ落とし込まれたサウンドを小気味よく繰り出していく。スタイリッシュでいてカラッとした清々しさを持つ楽曲群は、照りつける直射日光を味方につけるようだ。目に眩しい鮮やかなコントラストも音によく似合う。優しさも雄大さも兼ね備えたキャッチーな『Night Owl』『Un-science』では見事な一体感を生み出し、ラスト『遠くまで』では大合唱が。分厚く折り重なった伸びやかなサビがお台場に響き渡った。



様々なバンドが一堂に会すフェス、集まったオーディエンスのお目当ても様々だが、「その中で一番強い光を放つバンドなりたい。いやなります! そのためには僕たちが全身全霊で立ち向かうだけ」。
その言葉通り、火の玉のような情熱の塊を投げつける[Halo at 四畳半]。容赦なく照りつける太陽に会場は灼熱、だがステージ上のメンバーの姿を観たら、ヘバッてなんかいられない。『リバースデイ』では、ブ厚いバンドサウンドと純粋でロマンティックな詞世界が、ダイレクトに胸を撃ち抜く。ステージへと差し伸べられる無数の手の先で、バンドはキッチリその姿勢を貫き、全曲フルテンのパフォーマンス見せてくれた。



サウンドチェック後のステージ板付きから咆哮一閃。空気を切り裂くような鋭利なサウンドで、突如幕を開けた[Ivy to Fraudulent Game]。スリリングに構築されたバンドアンサンブルを一糸乱れぬ呼吸で表現する。緊張感を孕んだ“静”から、激情がほとばしる“動”へ、その奔流がオーディエンスをダンスへと誘う。
「野外が似合うわけないけど、カッコイイかカッコ悪いかで判断していただければ」。媚びることを知らぬ王様MCでドライな表情を見せたかと思えば、続く『劣等』ではフロアに身を乗り出して激烈に煽り立て、ラスト『故郷』では切なくも温かい旋律を染み渡らせる。緩急自在にして終始引き込むステージが見事だった。



大きな歓声と盛大なハンドクラップで迎えられた[androp]。ド頭『Voice』から始まった珠玉の音世界、エレクトロニカを交えた浸透性と描写力の高いバンドサウンドの数々は、会場後方まで伝播したオーディエンスの躍動となってお台場の地をも揺らす。
「この景色に似合うような新曲を持って来ました」という『Sunrize Sunset』でのレゲエのリズムは、内澤崇仁の甘美な歌声と絶妙にフィットし、ようやく太陽が西に傾き始めた湾岸の風景と相まって心地よく響き渡る。思い思いにサウンドに身を委ねるオーディエンス。『Mirror Dance』、そしてラスト『Yeah!Yeah!Yeah!』へと、その高揚感は徐々に傾斜角を上げていき、このお台場野外特設会場の地を日常から切り離したような、独自の空間を展開させて見せた。



夕暮れという最高のシチュエーションにして、最高の歌心を響かせる[ラックライフ]が登場。『サニー・ディ』『初めの一歩』と、胸躍らせる軽快なビートでアッパーなスタートを切ったステージは、切なさもまとったエモーショナルへと徐々に変化していく。新曲『リフレイン』を挟み、『名前を呼ぶよ』では、ストレートなバンドサウンドから浮き彫りにされた言霊が全方位に飛び交うようなパワーを感じさせる。「あなたが幸せになれるような歌を歌いたい」とは、冒頭でのPON(Vo)のMCだが、フェス開始から約6時間、良い意味でまったり楽しむ夕刻のオーディエンスに、最高のカンフル剤となるような歌力が印象的だった。



「今日、最年長かな。ここに立ってる以上、マジで爪痕残そうと思ってます」
ステージから隠しようのない貫禄を芬芬と漂わす[ストレイテナー]は、1曲目[Merodic Storm]から一瞬でオーディエンスの耳目と足腰を掌握し、会場は終始ダンスフロア状態に。文句なしの美メロと、テナー仕掛けに構築されたリズムアンサンブルは立体的に音を解き放ち、変幻自在のグルーヴを生み出していく。
「俺たち幾つになってもライブハウスにいるんで、会いに来てください」。常に立ち位置はライブハウスにあると語るホリエアツシ(Vo)の言葉は、ライブハウスから発信し、フェスへとエネルギーを昇華してまたライブハウスへと還っていくムロフェスの場に相応しい。ナカヤマシンペイ(Dr)曰く「ストレイテナーらしいシティポップ(笑)」という『BERSERKER TUNE』で、夜のお台場にクレイジーストンプを巻き起こし、狂熱の余韻を残しつつ圧巻のステージを終えた。



3ピースをは思えぬ重厚な迫力を生み出す演奏、そして鋭く切っ先を尖らせて飛び込んでくる椎木知仁(Vo&Gt)の言葉の数々。新たなカリスマのごとく、その存在感を見せつけるステージで終始オーディエンスを圧倒したのは、LEFT STAGEのトリを務めた[My Hair is Bad]だ。
「ムロフェスまだ終わってないですよね?」「どんどん来いよ!」「こんなんじゃ帰れねぇ!!」と煽り続ける姿は、広大な野外特設会場をライブハウスへと変えていく。恋、夢、憧れ、そして怒りや葛藤、心に溢れかえる思いのたけを、そのまま溢れかえる言葉として、衝動として吐き出す椎木。彼らの一挙手一投足に引き込まれ、3人がフロアの5000人を飲み込んでいく。『フロムナウオン』で絶頂を迎え、『夏が過ぎていく』で満場の大喝采を沸き立たせたステージは、全6曲ながら凄まじい密度と上限なき熱量を体感させた。オーディエンスの脳裏とムロフェスの歴史にきっちりとその爪痕を刻み込み、タスキをRIGHT STAGEトリのグッドモーニングアメリカへと繋ぐ。



Text : 根本豪