4回目の夏、更なる飛躍を遂げたMURO FESTIVAL 2015
今年も豪華アーティスト30組が東京湾に集結!



もはや夏の風物詩となりつつある昨今の音楽フェスシーン。その中でも“ライブハウスからフェスへ、フェスからライブハウスへ”を掲げ、独自のスタンスを築いてきた“ムロフェス”ことMURO FESTIVALが、7月26日、東京晴海客船ターミナル特設ステージにて行われた。


2015年で4回目の開催を迎え、今年も無事、東京湾を背景に豪華アーティストが共演する勇姿を拝むことができた。とはいえ、その顔ぶれは初年と比べると少しずつ様変わりしている。“ムロフェス皆勤賞”のバンドもあれば、今年が初参戦といったアーティストも少なからず見られた。これは来場者にも同じで、「一年目のあの頃は……」などと早くも過去の名場面として振り返られているところからしてもそうだ。


要するに“歴史”が形成され始めているのだ。そうやって年を重ねるごとに成長をつづけてこられたのは、主催代表であるTSUTAYA O-Crest 店長室氏を始め、その意志を汲む出演アーティストたちの誰もが、日本の音楽シーンそのものの変化に敏感に反応しながら常に真っ向勝負を挑みつづけてきたからだろう。


そんな熱意、希望、何より”オレ(ワタシ)タチは音楽が好きなんだ!”というシンプルな想いに溢れた計3ステージの中から、ここでは室内に設けられたRAINBOW STAGEに注目し、全12出演アーティストが紡いだ熱狂を再現してみることにしよう。






野外ステージの開演から25分、スケジュールどおり室氏の開演宣言がなされ、ステージ背後の窓からのぞく東京湾のパノラマを背に登場したのは、トップバッター [CHERRY NADE 169] だ。


フェスの始まりに相応しい疾走感のあるナンバーで始まり、2曲目『フラッシュライト』でさらに会場を一体にしていく。Ba.秋山の名物MCの後、Vo.滝澤は「ずっと毎年見ていた。出たくて仕方がなかった」と感極まった様子で初出演の心境を語り、そんな想いを重ねるように『シナリオライター』を披露、“あきらめないで”と歌い、締めくくる。


夏の午前の日射しがより彼らの世界観とマッチしていたのも印象深く、このロケーションの変化が、バンドの音楽をこの先どうドラマチックに演出してくれるか、そういうところも楽しみの一つである。











その後を引き継ぐのは、大阪出身の4ピースバンド [ラックライフ]
Vo.PONの歌とギターで始まり、彼ららしい優しい曲調とメロディで会場の雰囲気を静かに導いてゆく。そうかと思えば、「2年連続出場、やったー!」と喜ぶ様子は、こちらまで嬉しくなってくるような純粋な姿で、それはそのまま彼らの音楽性に繋がっている。高校のクラスメイトで結成され、ずっと一緒に続けてきたバンドだからこその親密で裏表のない、真っ直ぐに響いてくる言葉と音楽。ラストの『ハルカヒカリ』の演奏が終わったとき、心の裏側をそっと柔らかくくすぐられたような心地良さがしばらく残っていた。











それが終わると同時に、次の演奏が始まる幕間、ホールを出た一角EV FIELD STAGEでは [フクザワ×松本明人(真空ホロウ)] のコラボレーションが行われる。


[真空ホロウ]のVo.松本がアコースティックギターを弾き語る隣で、イラストレーター・[フクザワ]がキャンバスに絵を描いていくパフォーマンスで、その一切台本のない即興性と、“耳にするものが次々と視覚化されていく”不思議さを一目見ようと、多くの人が周囲を囲んでいた。マイクも使わず、ただひたすら歌い、ひたすら描いてゆく(最終的にできあがったのは淡い色調で描かれた女の子だった)。室内とも野外ともちがった、独特なアンプラグドな空間。


“表現すること“であれば、必ずしもバンドでなくてもいい??そんな一端を味わえるのもムロフェスの特徴だろう。











さて再びホール内へ目を向けると、[DOOKIE FESTA]のお出ましだ。
音出しの段階で既に反応したオーディエンスが手を上げるなど、より一層“フェスモード”のギアが一段階シフトしているのが分かる。大阪在住の4ピースのこのバンド、完成度はもとより個々の演奏レベルも高く、とくにGt.安田のスラップ奏法と四つ打ちビートがこの上なく気持ち良い3曲目『タイムマシーン』では、ホール全体がロック・ビートに酔いしれた。


ファンクやブルースも消化した幅広い音楽性には頼もしさすら感じられ、Vo.井上の「気をつけて遊べよー!(モッシュや水分補給など、我を忘れたハイテンションなオーディエンスに向けて)」という気づかいにも表れている。このバンドのおかげで、会場の雰囲気はすっかりロック色に塗り変わった。









その後を紡ぐのは室内初の3ピースバンド[Half-Life]
初出演を感じさせない堂々とした佇まいで現れ、登場SEも使用せず、サウンドチェックからそのままなだれ込むように本編を始める。そのイントロが鳴った途端どっと会場が湧き、休めることなくエモーショナルに突き進む。ありふれた日常に潜む迷いや善悪を独特の視点で捉えた3曲目『SCORE」では、ときにやさしく、ときに激しく、聴く者の心を揺さぶり、導いてゆく。


「楽しいだけじゃない。届けるためにここにきた」というVo.上里洋志のMCどおり、ストイックな姿勢とメッセージ性に魅了された。








野外の猛暑がピークを迎える14時頃、日射しもギラギラとコントラストを強めたところで登場するのは[JELLYFiSH FLOWER’S]


Vo.松尾のハスキーボイスと、思わず拳を突き上げたくなる骨太サウンドが特徴の4ピースバンドだ。「今日の出演者の中で一番、遠方から駆けつけたのではないか」というコメントに、オーディエンスが大歓声で応える。その言葉どおり、地元である九州、宮崎の音楽シーンを背負って立とうとする意気込みが、そのままステージの熱気へと転化されていく。4曲目『本当のこと』では、その切ない心情を歌いあげたバラードに会場の誰もが酔いしれた。さまざまな場所でさまざまな人を虜にさせてきた自信と完成度とが、今後もより多くのオーディエンスを、出身や年齢に関係なく魅了し続けるだろう。


“良い音楽であれば東京も地方も関係ない”。ムロフェスに参加すれば、このようなふだん足を運べないような日本中の良質なバンドと巡り合える。ロックファンにとっては嬉しい限りだ。













その余韻に浸る間もなく、「始めてもいいですか?」と、Vo.矢田貝の一声から演奏を開始したのは[Liaroid Cinema]だ。


客席から大歓声が上がったのを皮切りに、助走も試奏なく、いきなりフルテンMAXの爆音が会場を圧倒する。言わずもがなの、この圧倒的熱量、圧倒的ハイテンション。それに応えるように、2曲目『Full-Tenn』では、サークルモッシュが自然と発生する。


0.1秒先のことすら考えさせない、あるいは考えていないような衝動的パフォーマンス、予測不可能な曲が次から次へと繰り出され、ジャンルの壁を突き破りたいと願うメンバーの姿勢は、どこか無難にまとまることが良しとされる昨今の風潮、とくに若い世代の声なき声を代弁しているようにも見える。


「音楽が好きでやめられない人がここに集まっている」と語る言葉に、会場にいる全ての人間が歓声で応えていたのが印象的だった。











そんな興奮が続く中、威風堂々と現れたのは、3ピースバンド[Large House Satisfaction]
Vo.小林(弟)の野生の狼のような特徴的なひび割れた声は、今フェス中、いや日本中どこを探しても見つからないかもしれない。


アッパーチューン1曲目『MONKEY』で、会場は再び熱狂に包まれる。“媚びないし、ブレない”というバンドの音楽的スタンスはこの日も貫かれており、もはや夏フェスの“お祭り感”に乗っかることすら潔しとしない「俺らは、俺らだ」というようなヒネクレ感が漂っていた(もちろん褒め言葉であるし、そこが彼らの魅力なのだ)。正にロックの申し子という形容が相応しい圧倒的パフォーマンスは、実は演奏技術の高さだったり、マニアックとキャッチーの絶妙なバランスだったり、意外なほど(?)基本的な、けれど本当に良いバンドであるために欠かせない鉄則によって支えられているからだ。


会場中が飛び跳ね、拳を突き上げた5曲目「Traffic」を披露した後、「おまえらはロックンロールが好きか? 愛しているか?」と、クールに言い放つVo.小林(弟)に、この言葉の歴史的重みに気負うところは微塵もない。最近こういうバンドにお目にかかることも少なくなった。だからこそ、このフェスに必要な存在なのだ。











そんな王道を極めようと突き進む、いわば“速球派”と対照的なのが、次に登場する[バックドロップシンデレラ]だ。


二年ぶりに本フェスへ帰ってきた池袋のボス、いや族長というべきだろうか。世界中のルーツ音楽を貪欲に取り入れた、ジャンル分け不能、正体不明の4ピース。


『およげ! たいやきくん』の替え歌でちゃっかり自分たちのペースに会場を塗り替えた後は、1曲目『歌わなきゃジャクソン』を筆頭に、光速ナンバーを容赦なく畳みかけてゆく。民族的グル?ヴと、呪術的なボーカルが、彼らを初めて観た人でもそうでない人でも、何か、こう、野生の部分を否が応でも掻き立ててくる。満員のホールのあちこちで踊りが始まる。「ウンザウンザって何? よく分かんないけど踊っちゃおう!」みたいな中毒者が続出し始める(そう、このバンドの音楽は“中毒”なのだ)。Vo.でんでけあゆみが客席へダイブしたままラストの『池袋でウンザウンザを踊る』へなだれ込み、フロアの熱気(あるいはカオス)はいよいよピークへと達する。













17時を過ぎ、暮れかけた夕日を背に、RAINBOW STAGEにシルエットが浮かぶ。
続いては [folca] だ。


1曲目『Alright』から4曲目『Layer』まで4曲立てつづけに演奏される図太いロックナンバーを、かすれた艶っぽい声で歌い上げるVo.山下。その背後を両翼入り乱れてGt.為川、Ba.藤田が飛び回る。


今日の出演者の中でも特に激しいライブパフォーマンスを繰り出しながらの一糸乱れぬ骨太な演奏にオーディエンスは魅せられていく。音が鳴り止むと会場が一斉に歓声を上げる。「今日出られなくてもクレストでずっとライブをし続けているバンドがいるから今日がある。彼らにも大きな拍手を」その言葉にわき上がる一際大きな拍手。会場には多くのミュージシャンも見受けられ、彼らのシーンにおける厚い信頼感を思わせた。









そしてすっかり更けた東京湾の夜景が似つかわしい[真空ホロウ]の登場だ。
長年共に活動してきたメンバーが脱退し、Vo.松本のソロプロジェクトとして再始動したばかり。本フェスでのライブがサポートメンバーを迎えた“新体制”の初披露となった。


「あらためまして、真空ホロウです」。この何気ない挨拶にも、“再始動”の新しい息吹が感じられる。透明感のある歌声、静謐な佇まい、水平線に消えゆく夕日すら自分たちの“世界観”に取り込んでしまう音楽的包容力。終盤に差しかかってそろそろ疲れも溜まり始めたオーディエンスの身体に癒しとなって届き、日中の日射しや、暑さや、流した汗、そういったものが自分たちの中で既に“記憶”となりつつあることを、ふと、気づかせてくれる。そんな心地よさに、疲れも忘れて聴き入ってしまうのだ。


「みんなで歌って帰ろう」そういって演奏したダンスナンバー『MAGIC』では、オーディエンスとの掛け合いが何度となく繰り返された。演奏終了後に8月の ROCK IN JAPAN FESTIVALにも同じメンバー構成で出演することが告げられ、会場にいた誰もがその手応えを感じ取っただろう。











そしてトリを務めるのが、待ちに待った [AJISAI] の四人だ。
活動休止から約一年ぶりのライブを、ムロフェスのトリで迎える。そんな期待感で、会場は異様なムードに包まれていた。「出ようかどうか迷ったけど、ここに立って全て吹き飛びました。ありがとう」と語るVo.松本に、ファンやミュージシャン問わず温かい声援が送られる。


久しぶりの大舞台だからか、少し緊張もしていたようだ。そんなメンバーたちの様子を、メンバー同士で笑い合う、それがいかにも[AJISAI]らしい。彼ら四人にしか出せない温かさを与え、それ以上の温かさに支えられてきたバンドの、愛に溢れたステージ。
演奏が終了して間もなくアンコールの手拍子が始まり、愛おしむように披露した『アイコトバ』で、約7時間に及んだRAINBOW STAGEに幕を降ろした。









4回目の、そして過去のどの年にも負けぬほどバラエティ豊かなアーティストたちが共演を果たした今回のムロフェス。とにかく全バンドに共通していたのは、「ライブハウスに還元する」という意志だ。とくに室内であるRAINBOW STAGEでは、ふだんのライブハウスに近い分、よりリアルな(ということは実力がシビアに表れる)パフォーマンスを堪能できたのではないだろうか。いうまでもなくどのバンドも圧巻だった。ということは、この圧倒的なパフォーマンスを毎夜どこかのハコで繰り広げているわけだ。いやはや。おそろしい猛者揃いだ。あらためてムロフェスの凄さが分かる。


音楽を通して人の心が動く瞬間、それはフェスだろうとライブハウスだろうと関係ない。その真意がブレない“ホンモノの祭典”だからこそ、このフェスは成り立っているし、今後も成長し続けるのだろう。ああ、来年の夏が今から待ち遠しい。






2015.7.26(sun)@東京晴海客船ターミナル特設ステージ
OPEN11:00/START11:30


REPORT by : 高崎 亮太 / 高木誠司
PHOTO by : KAZUKI SANO、MASANORI FUJIKAWA、KOHEI SUZUKI、オチアイ ユカ、AKIHO MIYAZAKI



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【野外ステージ】
11:15-11:30 ソフルフード (opening act)
11:35-12:00 My Hair is Bad
12:05-12:30 MAGIC OF LiFE
12:35-13:00 04 Limited Sazabys
13:05-13:30 a flood of circle
13:35-14:00 BLUE ENCOUNT
14:05-14:30 Rhythmic Toy World
14:35-15:00 石崎ひゅーい
15:05-15:30 BYEE the ROUND
15:35-16:00 Halo at 四畳半
16:05-16:30 GOOD ON THE REEL
16:35-17:00 ircle
17:05-17:30 SUPER BEAVER
17:35-18:00 LACCO TOWER
18:05-18:30 八十八ヶ所巡礼
18:35-19:00 TOTALFAT
19:05-19:30 グッドモーニングアメリカ
19:35-20:00 アルカラ


【屋内ステージ】
11:50-12:15 CHERRY NADE 169
12:30-12:55 ラックライフ
13:10-13:35 DOOKIE FESTA
13:50-14:15 Half-Life
14:30-14:55 JELLYFiSH FLOWER'S
15:10-15:35 Liaroid Cienma
15:50-16:15 Large House Satisfaction
16:30-16:55 バックドロップシンデレラ
17:10-17:35 folca
17:50-18:15 真空ホロウ
18:30-18:55 AJISAI


【EVステージ】
12:55-13:20 AJISAI フクザワ×松本明人(真空ホロウ)