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DAY1:TENT STAGE

DAY1:TENT STAGE

「ライブハウスを皆でもっと面白く」
全ての人が当事者になれるTENT STAGEの初日

ライブ開始前から超満員、テント外にも人が溢れる程のTENT STAGE。筆者と挨拶を交わす室氏が「TENT STAGE良いでしょ」と自信を持って言うこのSTAGEは、室氏曰く「ムロフェスのライブハウス」。ステージの大きさは違えど、思い入れは変わらない。何よりも、このフェス中、誰からともなく、何度も繰り返される「ここはライブハウス」という言葉。それが形になったようなこのSTAGE。キャパ250人程、音響も照明もライブハウスさながら、スタッフ達もO-Crestの関係者達で運営される。正に出張O-Crestお台場ver.はこのムロフェスの根っこの部分である、ライブハウスの鼓動を高ぶらせんがため、初日は10組のアーティストがこの舞台を駆け抜けた。

RIGHT STAGEの開始から程なく、TENT STAGEのスタートを待ちわびるオーディエンス。ライブ開始前からこのライブハウスは超満員。この場所への期待、この場所でしか見れないものを感じるため。ステージに熱い視線を送るオーディエンスの背中を見ながら、そんな熱気が伝わってくる。

TENT STAGEの先陣を切るのは[Bentham]。登場と同時にオーディエンスから大きな歓声が上がる。小関(Vo&Gt)の突き抜けるハイトーンボイスと、その声を彩る巧みなコーラスワーク。ギターロックと洋楽のポップなノリを掛け合わせたような楽曲。全てが心地よく開幕に相応しい。小関も、オーディエンスと満面の笑みで喜びのコミュニケーション。メジャー1stフルアルバム[Re:Wonder]からの楽曲も披露され、爽やかにも熱く、開幕を告げた。



続くのは、O-Crest時代から、室氏と一緒にCrestシーンを作り上げてきた[CHERRY NADE 169]。2年振りにムロフェスに登場である。お馴染み、Ba秋山の“わっしょいコール&レスポンス”でシッカリ盛り上げ、披露された新曲『おまえと心の中の人』では、滝澤(Vo&Gt)のしっとりと歌い上げるイントロから、徐々に上がっていくバンドの熱がフロアに伝わっていく。オーディエンスの心に触れんとするバンドの熱気、それに応えフロアから上がる多数の拳、まっすぐ彼らを見守るバンド仲間の視線。バンドも周囲も“クレストのチェリナ”と認識し、愛おしい瞬間を胸に刻み込むようだ。“クレストのチェリナ”は、いつも以上に熱い演奏で、この日への思いを爆発させた。



太陽が一番高く昇り、その日差しが増す中、爽やかに真っ白な衣装で登場したのは[LILI LIMIT]。牧野(Vo&Gt)は言う、「愛を込めて」と。その優しく力強い歌声と、浮遊するドリーミーなキーボードの音色が鮮やかに空間を満たす。そして、バンドとオーディエンスのステップを誘うタイトなリズム隊。優しく「踊ろうよ」と観る者の手を引き、誰もが自由にその体を揺らす。“全力に熱い”バンドの中、ムロフェス初登場のこのバンドが新たに見せたフェスの一面。TENT STAGEに爽やかな風を吹かせる。



[QOOLAND]の平井(Vo&Gt)は言う。「本当に、本当に出たいと思っていたフェスに出れました! 最後まで一生懸命やります!」。その言葉の通り、駆け抜けた25分。確かな演奏力に裏打ちされた自信と、この日の日差しにも負けない熱さで“一生懸命”を表現する。ラストは『勝つまでが戦争』。現実と理想に揺れるありのままを歌い、それでも“僕等も歳をとる だけど見える 未だ見える”、その希望を高らかに宣言し、この日を加速させる。



[QOOLAND]の熱いバトンを受け取って登場したのは、神戸発ギターロックバンド[ドラマチックアラスカ]。「ドラマチックアラスカです!よろしく!」のシャウトから全力のスタートダッシュ。熱の上がりきったフロアと真っ向勝負。TENT STAGEは更に灼熱のボルテージ。一方MCでは「ムロフェスでは、バックステージにもクーラーはありません。つまり、皆が同じ条件。どうせなら、この暑さを皆で楽しむ感じで行きませんか!?」と、ユーモアも交えつつほっこり緩める場面も。演奏はさらに熱く、「あなたの人生は間違ってないと全力でいうことができます!」と『人間ロック』を投下。呼応するフロアからは無数の拳が上がった。



数々のバンドがこのステージで叫び、ボルテージを上げる中、アコギ1本、たった1人。「ムロフェスを盛り下げに来ました」と笑いを誘いつつ、マイペースに[石崎ひゅーい]が登場。同時刻に行われているRIGHT STAGEの音がTENT STEGEにも漏れ聴こえる中で、「負けません!」と、狂気と清純さを併せ持つ声、その楽曲でオーディエンスの耳と心を奪っていく。引き語りワンマンツアー[きびだんご]を控え、よりその感性に磨きがかかる石崎。『夜間飛行』では「皆さんに全部あげる!!」と、その全てを曝け出し、生々しい魂に触れたオーディエンスは大きな歓声で応答。大切なのは形式ではなく、存在証明の在り方。ステージに立つ1人の男から、そんなメッセージが感じられた。



時刻は16時20分。夕刻時といえど、まだまだ太陽の熱は冷めない。From寝屋川vintage[Unblock]の登場である。叩き上げのバンドマンらしく「良い歌、良い演奏はもちろん、良いライブしに来ました」と直球勝負で、目の前にいる者に向けて放たれるバンドのエネルギー。それが、ライブハウスでも、フェスでも変わらない。いつものように、そして毎回がいつも以上に。そんな思いの詰まったパフォーマンスは美しく、観る者の胸を打つ。田口(Vo&Ba)の言う「あんた達の一番近い距離で」。そんな思いの詰まった音楽は、この場所で、確かに心に触れていた。



続くは[ココロオークション]。その音色はたおやかに響き、暖かい。それは、夏の夕暮れが近づくことを告げる。「今を生きて行け」と歌う『フライサイト』から始まり、ラストの『蝉時雨』まで。粟子(Vo&Gt)の、柔らかでも芯のある歌声は、張り上げるのではなく染み込ませるように。耳を傾けるのは満員の会場、テントの外まで溢れる人々。10月15日に渋谷CLUB QUATTROでのワンマンも控える彼等。シーンに高まる期待にも充分過ぎるライブで応え、初日の終盤へそっとバトンを渡す。



辺りはすっかり日が落ち、暗闇に生えるステージライト。空気感は正にライブハウスのそれだ。薄暗い灯は無骨なロックバンドに似合う。[Age Factory]の登場である。Vo&Gt清水の爪弾くギターと歌から叙情的に始まるも、瞬く間に美しい轟音に包まれる会場。「今日をぶっ壊せ!」。メッセージは野生の誠実さを持って放たれる。その姿を息を呑んで見つめる者、こらえ切れず拳を上げる者。統制された楽しみ方ではなく、言葉にせずとも、正真正銘の1対1の光景。どこにも無い、ここにしかない瞬間。[Age Factory]の音楽を触媒とし、それぞれが自分達の今日を刻む。ラストは『ロードショー』。儚くも慈しみを込めたこの曲で、初日TENT STAGEのトリ[THE MUSMUS]へとバトンを繋げる。



SEから盛大に上がるクラップは期待の証。ムロフェス最凶の女性Vo・CHIO率いる[THE MUSMUS]の登場である。演奏開始と同時に巻き起こるモッシュピット。[THE MUSMUS]の登場を待ち焦がれたファンも全力で応える。繰り出される楽曲は『オメガリズム』をはじめ、この日最大の激しさを纏い、フロアを突き上げる。CHIOは「今までクレストではダークホース的な扱いやったんですけど、今日トリ頂きましたー!!」と絶叫で喜びを表現。より激しく、高まるパフォーマンスとフロア。演者にも観客にも言葉はいらない。それほどに激しく美しく、この場にいる全ての人々が輝いている瞬間だった。「ありがとう! 最高の日になりました!」、その言葉にはO-Crestから積み上げ、今日に至った歴史の全てが詰め込まれ、ありったけの真実をもって叫ばれた。



[THE MUSMUS]の激しさと歓喜の余韻を携え、初日TENT STAGEは幕を閉じた。日頃、O-Crestに出演しているバンドはもちろん、新たに加わったラインナップ。そして、終日このステージに集まったたくさんのオーディエンス。その全てが、ムロフェスの未来への期待を表しているように思えた。この物語には続きがある。そして、その中心にはMURO氏が謳う「ライブハウスを皆でもっと面白く」。それはつまり、全ての人が当事者になれるイベント。そんな思いが透けて見えるTENT STAGEの初日だった。

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